Thoughts 04
不動産の営業を受けるとき、
どこを見ればいいか
先に申し上げておくと、私たちも売る側です。そのうえで書きます。不動産の商談で「話がうまいな」と感じたとき、何を見れば落ち着いて判断できるのか。知っておくだけで、ずいぶん楽になります。
なぜ、こんなことを書くのか
私は、営業を科学の対象として捉え、企業の営業組織の改革に携わってきました。業種を問わず、さまざまな企業で営業をテーマにセミナーの講師も務めてきました。つまり、勧める側の仕組みを、長く研究してきた立場です。
ただ、そこで組み立ててきたのは話し方の技術ではありません。お客様がご自分で判断できる状態をどうつくるかです。判断できないまま契約に至った取引は、あとで必ず問題になります。
ですから、これから書くことは手の内を明かす話ではなく、私が良い仕事だと思っていることの説明です。同じ物差しを、私たちにも向けていただいて構いません。
営業が悪いわけではありません
商談の場で相手が熱心に勧めてくるのは、当たり前のことです。私たちもご提案します。問題は熱心さではなく、判断に必要なものが揃っているかどうかです。
見るべきところは、そう多くありません。次の3つだけで足ります。
1. 時間
持ち帰れるか
「今日中に」と言われていないか
2. 比較
他と比べられるか
他の選択肢の話が出てくるか
3. 根拠
数字の出どころ
相場か、査定か。概算か、見積か
3つとも「はい」なら、あとはご自身の判断で大丈夫です。
1. 持ち帰れるかどうか
いちばん分かりやすい目印です。「持ち帰って考えます」と言ったときの反応を見てください。
「どうぞ、資料をお持ちください」と言われたら、まず心配ありません。逆に、そこで話が長くなるようなら、一度距離を取っていいと思います。
ただし、本当に急ぐ場面もあります。人気のある物件に複数の申し込みが入るのは、実際によくあることです。ですから「急かされた=悪い」と決めつける必要はありません。
見分け方はひとつです。急ぐ理由を、具体的に説明してもらえるか。「他にも見ている方がいます」だけでは根拠になりません。「いつまでに、なぜ」が出てくるかどうかです。
2. 他の選択肢の話が出てくるか
ひとつの物件だけを熱心に勧められているとき、少し立ち止まってみてください。
不動産の判断は、いつも比べたうえでの選択です。この物件と別の物件。買うのと借りるのと。いま買うのと、一年待つのと。ほかの道の話が一度も出ないまま話が進むとしたら、それは提案ではなく、案内です。
聞き方は簡単です。「ほかに候補はありますか」「この物件をやめたほうがいいとしたら、どんな理由がありますか」。後者に答えられるかどうかで、だいたい分かります。
3. 数字の出どころを聞く
これは別の記事にも書きましたが、いちばん大事なところです。
提示された数字について、「これは相場ですか、この物件の査定ですか」と聞いてみてください。費用についても、「概算ですか、見積もりですか」と。
相場と概算で作られた数字は、甘く出ていることが多いです。悪意があるわけではなく、初期の段階では他に置きようがないからです。ですから聞くべきは正しいかどうかではなく、どちらで作った数字なのかです。
ここで言葉を濁されるようなら、まだ判断する段階ではありません。
断ったあとの態度が、いちばん正直です
最後にひとつ。断ったあとに、どう振る舞うか。ここに、その会社の姿勢がいちばん出ます。
次の機会にまた声をかけてくれるのか。それとも連絡が途絶えるのか。一度断っても関係が続くかどうかは、長い付き合いになるかを測る、いちばん確かなものさしだと思っています。
私たちも、同じ目で見ていただいて構いません
ここまで書いたことは、そのまま私たちにも当てはまります。
急かしていないか。ほかの選択肢を出しているか。数字の出どころを言えているか。同じ物差しで測っていただいて結構です。むしろ、そうしていただいたほうがありがたいです。
他社さんからのご提案について「これはどう見ればいいのか」というご相談も承ります。買う・売るが決まっていない段階で結構です。