Thoughts 01

買う前の計算は、
なぜいつも甘くなるのか

買う前に立てた見込みと、買ったあとの現実が違う。よくある話です。ただ、外れ方には向きがあるように思います。「思っていたより良かった」は、あまり聞きません。たいていは「思っていたより悪かった」です。

住むために買う家にも、いつか出口が来ます

投資で買う人は、数字を計算します。自分が住む家を買う人は、あまり計算しません。「気に入ったから」で決めます。

それでいいと思います。住む家は商品ではありませんし、毎日の心地よさは数字になりません。

ただ、その家にずっと住み続ける方は、思っているより少ないかもしれません。転勤があります。子どもが増えます。逆に、子どもが出ていきます。親の介護が始まります。いつかは相続になります。

そのとき家は、「売るもの」か「貸すもの」に変わります。買った日から、その日はもう始まっています。

住むために買う家にも、 いつか売る日、貸す日が来る。

ですから、自宅を探している方にも、一度だけ考えてみてほしいとお伝えしています。「この家、いま貸すといくら?」「10年後に売るといくら?」

その数字で決めてくださいと言っているのではありません。知らないまま決めないでください、という話です。

ずれ方には向きがあります

では、なぜ買う前の計算は甘くなるのか。

ただの計算ミスなら、高く出ることも低く出ることもあるはずです。ところが実際に見ていると、同じ方向に外れていることが多いように思います。

理由は単純です。入ってくるお金は多めに、出ていくお金は少なめに置かれているからです。

入りは下がり、出は上がる

調べ始めたばかりのときは、細かいことが分かりません。そこで、こう置きます。

  • 入るお金は「そのあたりの相場」で置く(家賃の相場、近所の売却事例)
  • 出るお金は「ざっくりの計算」で置く(工事費、修繕費、諸費用)

どちらも、ふつうのやり方です。問題は、この2つの外れ方が、打ち消し合わないことです。

数字そのものは逆に動きます。入りは高いほうへ、出は低いほうへ。ただ、効く先は同じです。どちらも「この物件は良さそうだ」と見える側に働きます。だから足し算になります。

相場というのは、そのあたりの平均です。実際に査定してもらうと、駅から遠い、日当たりが悪い、部屋が使いにくい、といった事情が引かれます。相場より下に落ち着くことが多いです。

ざっくりの計算は、うまくいったときの数字です。実際に見積もりを取ると、地盤が弱い、道が狭い、資材が値上がりした、といった事情が乗ります。上に振れることが多いです。

入るお金(家賃・売値)

相場で置いた額

買う前の見込み

下がる

査定した額

実際

出るお金(工事・修繕・維持費)

試算した額

買う前の見込み

上がる

実際かかった額

実際

入りは下へ、出は上へ。動く向きは逆でも、採算は両方から削られる。

片方だけなら小さなズレでも、両方が同時に効くと結果は大きく変わります。投資なら「思ったより儲からない」、自宅なら「売っても住宅ローンが残る」という形で出てきます。

自宅の場合、気づくのが10年後になります

投資物件なら、毎月のお金の出入りですぐ分かります。

ところが自宅は、住んでいるあいだ何も起きません。ズレが表に出るのは、売ろうとした日です。

その日になって、近所の売却事例が思ったより安い、直さないと買い手がつかない、住宅ローンの残りのほうが多い、と分かる。答え合わせが10年遅れて来る。ここが自宅の気をつけたいところだと思っています。

買う

ここで計算する

住んでいるあいだ

何も起きない。ズレは見えない

売る日

ここで初めて分かる

答え合わせが10年後に来る。だから、買う前に一度だけ確かめておく。

投資物件なら毎月のお金の動きで気づけます。自宅は、売ろうとした日まで何も教えてくれません。

逆に言えば、買う前に一度だけ確かめておけば、その日を落ち着いて迎えられます。

私たちが確かめているのは、2つだけです

最初の計算は、候補を絞るためだけに使います。買う理由には使いません。実際に判断するのは、次の2つが出てからです。

  • その物件についての査定(相場ではなく、この家はいくらか)
  • 実際の見積もり(ざっくりではなく、この家にいくらかかるか)

この2つが出るまでは、どれだけ数字が良く見えても「まだ分からない」と考えます。

高く買うこと自体は、悪くありません

「この物件、利回り◯%と書いてあるのですが」「この値段は妥当ですか」というご相談をいただきます。

そのときお答えするのは、良いか悪いかではありません。その数字が、どうやって作られたかです。相場から作った数字か、査定から作った数字か。ざっくりの費用か、見積もった費用か。それが分かれば、どれくらい割り引いて見ればいいかが決まります。

気に入った家を、少し高くても買う。私たちは、まったく構わないと思っています。暮らしの満足は数字に出ないのですから。

避けたいのは、そこではありません。高いと知らないまま買って、10年後に驚くことのほうです。

ご自宅でも、投資物件でも、同じ確かめ方をします。買うと決めていない段階で結構です。

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