Thoughts 03
売る・貸す・持ち続ける。
そのままでは比べられません
相続した家。住まなくなった家。空いたままの部屋。「どうしましょうか」というご相談で、いちばん多いのがこの3つの選択です。決められないのは、情報が足りないからとはかぎりません。比べ方がそろっていないことが多いように思います。
3つは、形がそろっていません
売れば、まとまったお金が一度に入ります。
貸せば、少しずつ毎月入ります。
持ち続ければ、お金は入りません。出ていくだけです。
売る
数千万円
一度に、大きく
貸す
月に数十万円
少しずつ、長く(入らない月もある)
持ち続ける
年に数十万円(出ていく)
入らない。出ていくだけ
形が違うものは、そのままでは比べられません。
入り方が違う。かかる時間も違う。手間も違う。形の違うものを並べて「どれがいい?」と考えているので、決まらなくて当然だと思います。
4つの物差しで、そろえます
ご相談を受けるとき、私たちはまずこの4つを同じ形で書き出します。
| 売る | 貸す | 持ち続ける | |
|---|---|---|---|
| 手取り | 一度にまとまって入る費用と税を引いた後 | 毎月少しずつ入る空室の月は入らない | 入らない税金と修繕が出ていく |
| 期間 | 数か月で終わる | 何年も続く | 決めるまで続く |
| 手間 | 売るときだけ | ずっと続く入退去・修理・滞納 | 少ないただし傷んでいく |
| やめやすさ | やり直せない | すぐには売れない | いつでもやめられるただし選択肢は減る |
ここまで書き出すと、たいていの方はご自分で答えにたどり着かれます。私たちが決めているのではありません。並べ直しただけです。
忘れられるのは、いちばん下の行です
手取りと期間は、みなさん考えます。手間も想像がつきます。抜けるのは「やめやすさ」です。
売却は、決まってしまえば終わります。ただ、やり直せません。
賃貸は毎月お金が入ります。でも、人が住んでいる家はすぐには売れません。こちらの都合で出ていってもらうこともできません。
持ち続けるのは一番気楽に見えます。ただ、家は傷みます。先延ばしにしたぶんだけ、選べる道は減っていきます。
どれを選んでも、何かが固定されます。それを知って選んだのか、知らずに選んだのか。数年後の納得感が、まるで違います。
この3つは、買う前にも一度考えてください
ここまでは、すでに持っている方の話でした。ただ、これから買う方にこそ、先に見ておいてほしいのです。
いま検討している家について、考えてみてください。
- 10年後に売るとしたら、いくらで、どのくらいの期間で売れそうか
- 貸すとしたら、いくらで借り手がつきそうか
すぐには答えが出ないと思います。それでいいので、一度考えてみてください。
ここで詰まる家は、買ったあとも同じところで詰まりやすいです。売りにくい家は、10年経っても売りにくいことが多い。借り手がつきにくい間取りも同じです。出口の狭さは、時間ではあまり直りません。
逆に「売るならこのくらい、貸すならこのくらい」と見当がつく家なら、この先なにが起きても動けます。転勤しても、家族が増えても、減っても。出口がある家は、そのまま暮らしの自由度です。
「マイホームは資産」は、半分本当です
よく言われる言葉ですが、私たちは半分だけ本当だと思っています。
売れる家、貸せる家は資産です。
売れない家、貸せない家は、住んでいるあいだは住まいですが、資産とは言いにくいように思います。固定資産税と修繕費がかかり続ける持ち物です。
これは家の良し悪しの話ではありません。心から気に入って、ここに住み続けると決めているなら、資産でなくても何の問題もない。ただ、そうと知って選んでいただきたいのです。
数字は出しますが、決めるのはご本人です
私たちにできるのは、4つを同じ物差しで並べることと、それぞれの数字がどこから来たのかをはっきりさせることです。
そのうえで、税金のことは税理士に、相続や登記は司法書士に必ず確認していただきます。ここは私たちが断定してよい話ではありません。必要でしたら、お繋ぎもします。
ご家族の事情や、その家への思い入れは、数字には出ません。それでいいと思っています。数字は、迷いを消すためではなく、迷っていい範囲をはっきりさせるために出すものです。
いまお持ちの物件のご相談も、これから買う家の「出口」の確認も承ります。「まだ決めていない」という段階を、いちばん歓迎しています。