Thoughts 07
欲しいものは、たいてい
自分でも分かっていません
ご相談の多くは、条件が決まった状態で始まります。「3LDK、この沿線、◯千万円まで」。ただ、その条件がどこから来たのかを伺うと、答えが出てこないことがあります。誰かに言われた、なんとなくそう思っていた。そういう答えがいちばん多いです。
同じ相談を受けた、2人の担当者
分かりやすい例で書きます。ある方が「3LDKを探しています」と言って来店したとします。
ひとりめは、3LDKを出します。条件に合う物件を並べ、駅からの距離と価格を比べ、いちばん条件のいいものを勧めます。相談者は「なるほど」と言い、資料を持ち帰り、そのまま戻ってきません。
もうひとりは、まず聞きます。普段どんなことを考えて暮らしているか。好きなもの、嫌いなもの。いま取り組んでいることを、どうして選んだのか。——3LDKの話は、しばらく出てきません。
そのうちに、こういう話が出てきます。「部屋数より、実家に1時間で行けるほうが大事かもしれない」「日中ずっと家にいるので、日当たりのほうが効く」。
ここで初めて、3LDKという条件が本当に必要だったのかが分かります。
本人にも見えていないだけです
誤解のないように書きますが、これは相談する側の落ち度ではありません。
自分が本当に何を求めているかを、はじめから言葉にできる人は、ほとんどいません。多くの場合、漠然とした不安や不満があるだけです。「いまの家は手狭だ」「そろそろ買ったほうがいいらしい」。その状態で条件を作ると、どこかで聞いた条件になります。
だから最初にやることは、物件を出すことではなく、その漠然としたものを、はっきりさせることだと考えています。
一見、関係のないことから伺います
ですので、ご相談の最初のほうで、不動産と関係のなさそうな話を伺います。
- 好きなもの、嫌いなもの
- 普段はどんなことを考えて生活をしているか
- 暮らしていて気になること
- いま取り組んでいることは、どんな理由で選んだのか
- 10年後、自分がどうありたいか
お気づきかもしれませんが、住まいの話が1つも入っていません。これは意図的です。
住まいの話から入ると、答えはすでに持っている条件の中に収まります。「3LDKが必要ですか」と聞けば「必要です」と返ってきます。関係のないところから入るほうが、条件の外に出られます。
回り道に見えるかもしれません。ただ、ここを飛ばすと、条件に合う物件は見つかっても、住んだあとに合っているかは分からないままになります。
聞くのは広げる作業、選ぶのは絞る作業
順番には理由があります。広げてからでないと、絞れないからです。
1. 伺う
広げる
条件の外の話まで含めて、何が大事かをはっきりさせる
2. 並べる
見比べる
はっきりした軸で、複数の案を同じ物差しに載せる
3. 決める
絞る
やめる場合も含めて、ご自身で選んでいただく
広げずに絞ると、はじめの条件から出られません。
条件から入る進め方が間違い、という話ではありません。条件がご自身の中から出てきたものなら、そのまま進めて問題ありません。確かめずに進めるのが危ういというだけです。
相談する側も、これは使えます
ここまでは私たちの進め方の話ですが、受ける側の判断にも、そのまま使えます。
会って早々に物件が出てきたら、「なぜ、これなんですか」と聞いてみてください。
暮らし方をほとんど聞かれていないのに答えが出てきているなら、その答えは、あなたのために作られたものではありません。あらかじめ売りたいものがあって、条件に合う人を探していただけ、ということが起こります。
逆に、遠回りに思える質問が続いたときは、手間をかけて外していないだけかもしれません。判断はそのあとで構いません。
条件が固まっていない段階のご相談を歓迎しています。「何を基準に決めればいいか分からない」という状態から、ご一緒します。