Thoughts 02
借りられる額は、
出していい額とはかぎりません
家を探しはじめると、まず数字をひとつ渡されます。投資なら物件の売り出し価格。自宅なら銀行に言われた「◯◯◯◯万円まで借りられます」。どちらも便利ですが、どちらも他人が決めた数字です。
売り出し価格は、売る人の希望です
言われてみれば当たり前ですが、忘れがちです。
売り出し価格は、市場が出した正解ではありません。売る人の希望と事情が入った数字です。相場より高いこともあれば、安いこともあります。
それなのに、その価格から考えはじめると、計算はそこに引き寄せられがちです。「家賃をもう少し強気に見れば届く」「この費用は後回しでいい」。ひとつずつは小さな調整です。でも、やっていることは「先に結論を決めて、あとから理由を作る」ことです。
借りられる額も、他人が決めた数字です
自宅を買う人が同じ落とし穴にはまるのが、ここです。
「5,000万円までお貸しできます」と言われると、それが予算に見えます。
でも、あの数字が意味しているのは「銀行が、貸しても回収できると判断した額」です。あなたが「無理なく返せる額」とはかぎりません。
しかも、その判断のもとになっているのは家そのものではなく、多くはあなたの勤務先と年収です。つまり、借りられる額はその家の良し悪しをあまり表していないことになります。審査が通ったからといって、良い買い物だとはかぎりません。
本当に必要なのは、3つめの数字です
私たちは、価格を見る前に別の数字を出します。「この家に、自分はいくらまで出していいのか」です。
自分の上限
自分で計算した額
売り出し価格
売る人が決めた額
借りられる額
銀行が決めた額
見ればいいのは、「自分の上限」のひとつだけです。
上限は、うしろから計算します
投資であれば、この順番です。
- 出口を決める — 最後にいくらで売れるか、いくらで貸せるか
- ほしい利益を引く — 何のためにやるのかを数字にする
- かかるお金を引く — 工事、解体、諸費用、金利、税金
- 残ったものが、出せる上限
自宅でも、やることは同じです。
- 出口を考える — 10年後に売る/貸すとしたら、いくらになりそうか
- 毎月いくらまでなら、暮らしを変えずに払えるか(借りられる額ではなく)
- 持っているだけでかかるお金を引く — 管理費、修繕積立、固定資産税、いずれ来る修繕
- 残ったものが、出せる上限
出口(最後に売れる/貸せる金額)
かかるお金=工事・修繕・諸費用・金利・税
「出せる上限」を先に出す。売り出し価格を見るのは、そのあとです。
この一本を先に持っておけば、あとは比べるだけです。価格が上限より下なら、検討する。上なら、見送る。
いちばんの効果は、断りやすくなることです
これが一番大きいと思っています。
価格から考えていると、断る理由をそのつど作らなければなりません。手間ですし、気も重い。自宅探しなら「ここまで探したのに」「家族も気に入っているのに」という気持ちも入ります。
先に上限を出しておけば、見送りは気持ちの問題ではなくなります。線を超えたかどうか、それだけです。良い家を逃したのではなく、条件に合わなかっただけ。次を見よう、と切り替えられます。
そして、その線は動かさない
難しいのはここからです。良い物件ほど、線のほうを動かしたくなります。「今回は特別だから」と。
動かすなら、もとになった数字のどれかを動かしてください。売れる値段を上げるのか。利益を減らすのか。安くできる根拠があるのか。自宅なら、毎月の支払いを増やすのか、ほかの支出を削るのか。
何も動かさずに線だけ上げるなら、それは計算ではなく願望に近いかもしれません。
私たち自身、うまくいかなかったものを振り返ると、たいていこの場面で線を動かしていました。ですので今は、動かすときに「何を動かしたか」を書き残すようにしています。書き残せないときは、動かしてはいけない場面です。
そのうえで、超えて買ってもいいと思います
誤解のないように書いておきます。上限を超えた家を買ってはいけない、とは思いません。
暮らしの満足は、数字に出ません。子どもの学校、実家との距離、日当たり、その街の空気。上限を200万円超えていても、そこに住みたいなら買えばいいと思います。
大事なのは、200万円超えていると知ったうえで超えることだと思います。それは判断です。知らないまま超えてしまうと、あとで悔いが残りやすいように思います。
私たちがお手伝いするのは、その線を引くところまでです。超えるかどうかを決めるのは、ご本人です。
「この家に、自分はいくらまで出していいのか」を一緒に出すところから承っています。ご自宅でも投資物件でも、買うと決めていない段階で結構です。